「労務管理の基本」6.労災を防ぐための労務管理
6.労災を防ぐための労務管理
労働時間と労働災害の関係は、ご存じのとおり、非常に密接です。
なぜなら、長時間労働は健康及び安全に直接影響を与え得るからです。
以下に、法的な観点と、実務的なリスク管理の両面から、長時間労働と労災について見て行きます。
【法的な観点】
長時間労働が引き起こす主な労働災害としては以下のものが挙げられます。
脳・心臓疾患
長時間労働(月80時間以上の時間外労働など)は、脳出血・心筋梗塞などの発症リスクを高め、労災認定の対象となることがあります。
過労自殺
社会的にも注目される深刻な事例として、過労自殺があります。労働時間との関連で言えば、時間管理の不十分さが原因となることがあり、労災と認定されることがあります。
【実務的な観点】
実務上の注意点は以下のとおりです。
管理監督者の残業の問題
管理監督者(=管理職)は、残業時間が把握されないため、残業手当が発生しません。
したがって、一般の従業員より長時間労働になりやすい傾向があります。
そうは言っても、まったく労災が適用されないと誤解すると、企業側の金銭負担や労災隠しにつながる可能性があります。
管理職であっても、労働時間を把握しておくことが大切です。
36協定の順守と特別条項の管理
従業員の時間外労働のためには、いわゆる36協定を結んで届け出る必要あります。
一般条項の場合、月45時間、年360時間までの時間外労働が可能になります。
また、それ以上の時間外労働を可能にする特別条項もあります。ただし、その場合でも月100時間未満かつ実施できる月数については制限があります。
以上が労務管理と労災の関係です。
労災を防ぐための視点は様々あるでしょうが、このように労務管理という実務的な観点からもアプローチすることができます。
2025/09/08
所長コラム